edaha展

 

※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます




宇フォーラム美術館 2023 6/8~25
2023 edaha展  笠原 宏隆 桐 健二 田中 宏美 柳 早苗





● コメント  キュレーター 関 仁慈
時の流れとともにアートは大きな樹木のように育まれてきました。 そしてそれは今も絶え間なく育まれています。その大きな幹はその時代時代で様々な枝を伸ばし、葉を付け、外からの光を取り込みながらまた成長していきます。そんな大きく育った今の”edaha”をより多くの方に観ていただきたく展覧会を企画しています。


● 桐 健二 Kenji KIRI



桐健二 「えそらごと」145×112


桐健二 「Speed of sound」130×163


桐健二 「Observation-0108」130×163


桐健二作品部分


Statement  私は、みるという行為にとても多くの時間を使う。視覚的にみるということではなく、感情や匂い、光や音を感じること。作品との対話も、みるという行為の中にあり、記憶とみえないものを手探りで地層を積層するようなやりとりを している。今、自分の目の前にある現実と、この世のどこかで実際に起きていること、存在したかもしれない並行した別 の時間軸や光景、意識と無意識、作為と無作為を共存させて、過去と未来を結ぶように、私たちがみたことのない2つの世界を色にのせて積み重ねていく。
Biography  2022 桐健二展 中和ギャラリー(日本橋) 2020 桐健二展 中和ギャラリー(銀座) 2018 桐健二展 中和ギャラリー(銀座) 2017~2022 未来抽象芸術展 スペースゼロ(新宿) 2018~2022 シテンノイロ ギャラリーストークス(青山) その他多数 / 2000 東京造形大学卒業


柳 早苗 Sanae YANAGI

柳早苗 「NuuⅠ」幅 約275


柳早苗 「NuuⅠ」部分


柳早苗 「NuuⅣ」 


柳早苗 「NuuⅢ」163×130 




柳早苗 「NuuⅡ」部分


Statement 木を紐で縫うことで、時の繋がりや世代を超えて受け継がれることを表現している。パリで木に出会い素材の面白さに魅了され、木での作品制作を始める。桜、柿、銀杏、樟、ケヤキ、松、檜など自身の周辺で手に入った木を再生させるように縫い続けている。現在は「Au fil du temps /ときを縫う」シリーズに取り組んでいる。木を縫い続けることによって、時空を超え、全ての存在が繋がることを目指している。
biography  2023,’22,’21 Tagboat Art Fair 東京都立産業貿易センター 浜松町館(東京) 2022 揺らぐ実体 gallery.cafe.newroll(群馬県) 2022 十花の毒 宇フォーラム美術館(東京) 2022 Daydream Galerie Grand E’terna(パリ) 2022 SICF22 Winners Exhibition 青山スパイラルガーデン1F(東京) 2022 15th TAGBOAT AWARD Selection Tagboat Gallery 阪急men's(東京) 2021 中之条ビエンナーレ2021 やませ(群馬県) 2021 個展 L'essentiel est invisible pour les yeux -オカオカクシGallery匣 けえどの会所(東京) 2021 Brillia Art Award 2021 東京建物八重洲本社ビル1F(東京) 2021 SICF22 EXHIBITION 部門 青山スパイラルホール(東京) 2020 美の精鋭たち2020+1 川口アトリア(埼玉県) 2020 Shapes of Element ART colours Exhibition パークホテル東京 2020,’19,’17 Contact 表参道画廊(東京) 2020 IAG AWARD 2020 東京芸術劇場(東京) 2020 KAIKA TOKYO AWARD 2020 THE SHARE HOTELS KAIKA TOKYO(東京) 2020,’19,’18 美術と街巡り 埼玉会館(埼玉県) 2020 15th TAGBOAT AWARD 渋谷ヒカリエ(東京) 2020 個展 「オ ・フィル・ドゥ・タン ときを縫う 」 JINEN GALLERY(東京) 2020 個展 「オ ・フィル・ドゥ・タン ときを縫う 」 Gallery Pepin(埼玉県) 2020~’16 Les points et un point -立体の作家たち- K's Gallery(東京) 2012-2015 ABA/Glacière (パリ)で直彫りを学ぶ。 /2002 東京造形大学彫刻科卒


● 田中 宏美 Hiromi TANAKA


田中宏美 「view’19-18 KAZE」131×162


田中宏美 「view’17-13」131×162


田中宏美 「view’21-14 KAZE」131×162


田中宏美 作品部分


Statement 私は作品にviewとタイトルをつけます。それは、絵画とはそれを見る人を受け止めて、日常とは違う空間に連れて行ってくれる風景であってほしいと考えているからです。どこかとかではなく、いつかどこかでみたような風景。 あたたかく包み込んでくれるような風景。風景は表層を視覚でとらえますが、目には直接見えない部分も含めた厚みのあるものとして私たちのイメージを刺激します。私は作品を、綿布にアクリル絵の具を塗り重ね、それを削っていき下の層を出していく方法で制作しています。作品の表層に現れた風景と、喚起されたイメージを感じて、私の絵を見る前より少しでも、爽やかで晴れた気持ちになってもらえたら幸いです。
Biography 2023どこかでお会いしましたね 埼玉会館展示室他・'13~ 2022 「喫茶芸術領域構築」展02 上尾アートセンター・SUTTENDO COFFEE 2021 田中宏美展-view- Oギャラリー(東京) 2020 それぞれの視界色 2 MUSEE F (東京) 2019 ONVO SALON×Gallery Pepin ‐今月の1枚‐ ONVO SALON浦和(埼玉) 2018 アートアイランズTOKYO 国際現代美術展 伊豆大島旧波浮小学校(東京)・'17 2010 art expo MALAYSIA 2010 CONVENTION CENTRE ( Kuala Lumpur, Malaysia) 2009 VOCA展 上野の森美術館 (東京) 2003 八王子市夢美術館開館記念展 開けゴマ!Vol.2 公募展美術誕生 八王子市夢美術館 (東京) 第14回関口芸術基金賞展 柏市民ギャラリー (千葉) その他多数 個展/グループ展 Oギャラリー(東京)、啓祐堂ギャラリー(東京)、 PNB-1253(埼玉)、Gallery Pepin(埼玉) /2002 女子美術大学大学院美術研究科修士課程美術専攻洋画修了


● 笠原 宏隆 Hirotaka Kasahara

笠原宏隆「而二不二(ににふに)」162×262


笠原宏隆「エラン ヴィタール」
233×161


笠原宏隆「エラン ヴィタール」146×106


笠原宏隆 作品部分


笠原宏隆「エラン ヴィタール」146×106


Statement 《エラン•ヴィタール 生命の飛躍》 画面の片方にだけ絵の具を垂らす。そして画面を半分に折り曲げて、もう片方の画面へとそれを転写させる。これを繰り返す。幾度となく重なり合った色や形は層を作り始める。初めの頃ははっきりとしていた色や形は、重なるにつれ曖昧になり、やがて一つの塊としての流れを形成し始める。この一連の行為は、生命の成長の過程にとてもよく似ている。一つの核となる細胞が幾度となく分裂を繰り返し、やがて形のある生命を完成させる。《エラン•ヴィタール》生命の飛躍とは、一つの差異から始まる反復運動の過程の間に存在し、意識の内側に予め組み込まれている進化の為のプログラムのようなものである。生命は意識の中で直感的に行うことで、この大きな宇宙の一部として共存し、この先またいずれ必ず訪れるであろう差異の始まりへと向かうまで、生命の進化という像《イマージュ》を思い描き続けるであろう。
biography 2023個展 栗原画廊 (東京)・’13~各年 2019 「座の会展」 O美術館 (東京)・‘18,’17 2016 個展 K's Gallery (東京)・‘14,’11 2011 BRIDGE2011 AKKO ART GALLERY (バンコク) 2009 BRIDGE200909 AKKO ART GALLERY (バンコク) 2004 秋季創画展入選 同・‘06,’05 2002 春季創画展入選 同・‘06,‘05,04,03,02 その他個展、グループ展他多数 《パブリックコレクション》 帝京大
/2001 東京藝術大学日本画専攻卒業


edaha展に           宇フォーラム美術館館長  平松朝彦
今回の展示は抽象系の40代の若手を関仁慈氏がキュレーション。edahaという副題は伸び盛りという意味か。当館の展示はほとんど抽象系だが、現代美術の抽象系を盛り上げようという意図もある。今回選ばれた作家は各々、独自の技法、世界を確立しつつある。また最近の日本の美術の展示場所の問題として大きな作品の展示の機会が少ないことがあるが、今回それぞれ大作に挑む機会となったのではないか。平面の桐氏は油絵100号F、3点、80号F、1点。田中氏は100号F、4点、笠原氏は約200号M、約150号P、80号F 2点、立体の柳氏は幅275cmのオブジェが空中に浮かぶ。
全体的に感じたのは、ディテールの面白さである。それは日本人の作家の特徴と言えるのかもしれない。例えばモネの睡蓮は、近づいて観ると何が描いてあるのかわからないといわれる。しかし今回の作品は近づかないとわからない、というか近づいて観ると面白い。ただ、こうした作品は小さな作品写真ではわかりにくく損してしまう。絵とはなかなか難しいものだ。そのため今回、あえて部分写真を載せた。それぞれは作者のコメントをお読みいただきたい。美術は「人による美の創造」であることを再認識した。新しい作家を紹介してくれた関氏に感謝。下記は私なりの補足の文である。

桐 健二/ 作者の想いを伝えるような原色の激しい色使いの油絵。ペインティングナイフ、ドロッピング等による強い表現が特徴。作者のいう「積層」がよくわかる様々な部分が面白い。「speed of sound」の下部に見られる流れる線は画面の表現を豊かにしていると同時に、見る人の想像力を刺激する。しかしそれは部分を切り取る視点によって変わってくる。それ故見る人の視点、感性の違いにより新たな発見を楽しむことができるだろう。

柳 早苗/ 作者は彫刻の作家だが、今回、平面的な作品表現に挑んだという。全体としてのテーマは「縫う」。趣旨は作者のコメントにあるが、縫う行為を問う謎かけのような作品であるが、何か虫のような有機物にも見える。まずNuu1 は約3m弱の空中に軽々と浮かんだオブジェだが薄くて光を通すレース状の布にピンク色やクリーム色の細い小枝が縫われている。吊る糸も赤、緑の糸。裏からも光が透けてきれいだが、さらに壁にそのオブジェの影も美しい。NuuⅡは幅3.7mの大きな和紙に木の戸板の木目が2枚、拓本のように摺られ、それを繋ぐように細い木片がメタリックな金糸、銀糸等で縫われている。NuuⅢは100号のややメタリックな複雑な緑色に塗られた下地キャンバスに細い木の枝が縫われている。NuuⅣは天井から木の幹の表皮が二点、糸で吊られている。表皮にはピンク色、緑色のレースなどが縫われている。木を縫うという柳氏の挑戦が続く。

田中 宏美/ 一見すると白いキャンバスにパステルカラーで線が引かれているだけに見える。しかしよく見ると下地の白の絵の具の下には実は何層も下地の色が重ねられ、その表面をサンダーで削ることにより微妙で繊細な無数の色が現れていることがわかる。線を描いているのではなく削ることにより線と色が生まれる。題名の「KAZE」であるが、見えない風の絵は少ない。しかし花鳥風月では風の言葉がある。風は単なる風ではなく、モノが生きていて移り変わることの表現なのだろう。

笠原 宏隆/ まず左右対称の構図が目に入る。これは二つの画面を合わせて色を付けているからだ。さらに色彩が際立ってきれい。よく見ると下地の帆布に絵具が染みている。カラフルな絵具は、単にキャンバスに塗られているのではなく染みることで濃淡の微妙なグラデーションが現れている。1960年代にアメリカでアクリル絵具が生まれた時、ニューヨークのモリス・ルイスやポールジェンキンスなどの作家たちが帆布にそれらをシミさせてシミ派と呼ばれた。それは水墨画の「たらしこみ」を思わせるが、カラフルなシミをしたのは、宗達や光琳ら琳派の草花図等が始まりだった。日本人でアクリル絵具によるシミ派的表現をしたのは当時ニューヨークにいた平松輝子だった。いずれにしろこの表現は極めて美しいので、もっと多くの人がシミ派の表現に注目してほしい。