レクイエム2023展

※ 展覧会の様子がパノラマでご覧になれます




レクイエム2023展
8月10日~20日

戦前に生まれた人たちがたどった歴史はそれぞれ過酷なものだった。今、かつての時代を振り返りたい。歴史の書物は常に勝者により書かれる。あの戦争の勝者は終戦後、日本の学者に当時の書物約八千冊の廃棄処分を命じ、実行された。勝利した成功体験者は再び歴史(戦争)を繰り返す。今、ロシア (ソ連)、中国(共産党)、北朝鮮は核兵器の数を誇り、世界を恫喝する。我々になすすべはあるのか。詩人の八覚正大氏から詩「天への門」をいただいた。また中野渡宏美氏は「荘厳(天の光マンダラ)」、「天への門」「うるわしの大和のくに」の前で鎮魂の舞を披露された。お二人に感謝します。
主な展示作品 ① ・二紀和太留(1921-1997)/戦艦榛名に乗艦。戦後戦友の鎮魂のレクイエム展を多数開く。・末松正樹(1908-1997)/昭和44年フランスパリにいてマルセイユからスペインに避難する途中で警察に捕虜として抑留される。・金光松美(1922-1992)/アメリカ生まれの日本人。1941年、人種差別よりカリフォルニアの収容所に抑留。志願兵としてヨーロッパに派遣。戦後はニューヨークでニューヨークスクールの一人として、後にロスアンゼルスで活躍。・ピカソ(1881-1973)/ドイツがスペインのゲルニカを爆撃したことに抗議し1937年、ゲルニカを発表。戦後、金光と出会う。・平松輝子(1921-2019)/2歳9ヶ月で関東大震災に遭遇。その時の体験を絵に描き、1966年にアメリカでデビュー。②特別展示 坂田一男(1889-1956)/パリでレジェの研究所で学び、1925年にパリで開かれ、ピカソも参加した「今日の芸術展」に東洋人として一人参加し国際画家として認知された。帰国すると抽象絵画を描き、日本の前衛美術の先駆者といわれる。平松、二紀の師である。


二紀 和太留「荘厳」(中央)

二紀 和太留「原爆」油絵

マイク 金光「スプリング」版画


パブロ ピカソ「ゲルニカ」版画


末松 正樹「エーゲ海の夜明け」油絵

特別展示、坂田 一男「構成」油絵


中野渡宏美氏

平松 輝子「一万の石の雨」(中央)

平松 輝子「廃墟」

平松輝子「うるわしの大和のくに」
1.8×3.6m、リキテックス

平松輝子「天への門」2.2×3.2m 墨


天への門(平松輝子作)に   八覚正大 23,8,20
その輝きに打たれて私は距離を測る……幾度も
太い墨の線で囲まれた中心部分が照明を受けて銀色から金色に推移し 
そこから生れ来るものに呼びかけられる
人の髪の毛の拡大された繊維細胞のような太い何本もの線
その中央に銀紙で貼られた紡錘形が燦然と輝き
そこが入り口のようであり
湧き出てくるエネルギーの放出口のようでもある
〈天照……〉 おもわず呟きたくなる荘厳さ
あるいは……極限に抽象化された如来像
振りむけば 二紀和太留の代表作『荘厳』が奥の聖なる壁から見つめている……
この美術館と出逢った最初の驚きは今回と同じく最奥の壁に掛かっていた
そのトリプティックな作品だったから
やはりそれに吸い寄せられ ずっと見続けていた……
振りむけば その対の広い壁の中央にーーこんなに足繁く通った場で
この作品に初めて出逢ったとは!!
今回、他の平松輝子の作品群はどれも幾度も拝見して来たものだった
関東大震災の焼け跡の生々しい記憶の絵 雅な和の世界を大胆な余白を残して表現した作品……
また記憶の中では 漢字を大きく自在に描いた数々の墨の作品 コラージュというには思い切った金属を埋め込んだ作品 輝く銀河をダイアモンドの粉で入れ込んだ作品 
さらには幅広の銀紙の上に流水模様を墨で描き込んだ作品 ローマ時代の廃墟を墨で描いた大作……
それらは作者が関わったものを自在に摂り込み
奔放に表出したものであったのだろうが
私は圧倒されつつ言葉として 纏めきれない憾みがあった
しかしこの作品には驚きの出逢いを感じる
ーー『荘厳』との出逢いとはまた違うなにか~
簡潔にしてシンメトリック 凝縮されたエネルギーの美観
和の美を象徴する黒髪の中に耀く瞳を光らせて凛然として揺るがない……
そう若き日の平松輝子の美しさと創作意欲の決然とした姿を
惜しげもなく一瞬にして開きみせた作品!
その対極の壁に夫君二紀和太留の作品が見つめるようにあって……
その関係を掴みかねていた私に
この作品で何かが啓かれそうな予感が湧いて来ている