彼岸にたつ

2023 9.28-10.1 一般社団法人現代舞踊協会主催 
Creative space2022宇フォーラム美術館賞 玉田光子 受賞公演「彼岸にたつ」
-煩悩に苦しむ現実のこの世を意味する此岸の岸「此岸」に対し、修行によって迷いを脱し、此岸の岸「彼岸」であった。彼岸(極楽浄土)は西方の遥か彼方にあると考えられていた。春分と秋分には、太陽が真東から昇り真西に沈むので、沈む太陽を礼拝し彼岸を想い、極楽浄土に生まれ変わることを願ったのが始まりである。-(リーフレット引用)
演目 第一幕 ヒガンニタツ 「死出の旅にて流れ着く そこは暗く孤独な惑いの世界」
第二幕 ヒガンヲタツ「暗く苦しい惑いの中に光が差す それは新たな命の始まり」

協力スタッフ: 音響/ 河田康雄 衣裳/岩戸洋一・本柳里美 映像・装置/鈴木明日香 舞台美術/長谷川嘉成(アトリエ創屋) フライヤー/長谷川嘉成(アトリエ創屋)


玉田光子公演 -彼岸にたつ- 平松朝彦
この公演は、クリエイティブスペース2022の宇フォーラム美術館賞の受賞公演として開かれた。丁度、この時期は彼岸の季節で、街中の地面にはいつの間にか彼岸花が咲いている。白い砂と水で満ちた白い砂利は浄土を表しているのだろうか。白い砂は禅的な静かな世界、幽玄な世界であり、日本独特の精神世界を表す。今回の企画はダンスというより日本の美意識の表現というイメージだが、空間、光、音楽、効果音を究めて高度のレベルで作りこんだ作品であり、玉田氏はダンサーだけでなく、脚本家としても優秀だ。
さらにこの建物の空間の特質を良く生かした設定は、空間デザインを手がけた長谷川嘉成氏の力でもある。氏は舞台だけでなく、展示室の入り口には大きな壁がしつらえて、それは光を遮る仕組みとなっているが、その裏には赤い彼岸花と白い砂利がしつらえてある。さらにパンフレットやチケットの秀逸なデザインを手掛けられた。
そもそもこの宇フォーラム美術館賞はこの空間をどのように生かすかということもポイントであった。今回は前回の短時間だった舞台がまったく異なる本格的なものとなった。天井からスポットライト的に光を当てたり、二台のスタンドライトを使ったりしたが操作に人手がかかるが、それらについて坂本秀子スタジオメンバーのご協力をいただいた。宇フォーラム美術館賞としては第一回目の公演であるが、きわめて高いレベルであったことに感謝している。今回の舞台は、照明、プロジェクター映像、衣装、そして主催者、現代舞踊協会の多くの方のご協力をいただいたことにも感謝したい。