11月9日(土)、10日(日)
-Creative space2024- 現代舞踊協会提携 現代舞踊新進芸術家育成Project2
文化庁令和6年度(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))
出演 ・冨川 亜希子・ふりだしにもどる(寺﨑 ゆい、宮本 悠加)・林 衣織、林 茶織・内山 陽瀬・鴻巣 明史・吉田 拓・加藤 理愛・山内 梨恵子
・Alc.6%vol(吉田 栄子、杉本 咲野)
全国より公募し選抜された(基本的には)新人のダンスパフォーマンス。
戦後、瀧口修造らは総合芸術としての実験工房を立ち上げ音楽、舞台に取組んだ。この企画も総合芸術を目指したい。空間を使ったパフォーマンスには宇フォーラム美術館賞が設定されている。
(写真は現代舞踊協会提供 写真 水内宏之)
受賞作 内山 陽瀬 「minute connection」
選考理由
この美術館の4面の壁はシンプルで「余白」である。美術館の主人公は動かない絵であるが、今回の主人公は動くダンサーである。多くの会場は暗くして中央天井からのスポットライト的なライティングが多いが、当館では横からのライティングが多用された。ダンサーに照明の光が当たり、壁に演者の影が映る。その影は拡大されダンサーより数倍も大きく、素早く動く。それは結果的に一人のはずなのにダンスの影により、もう一人の黒いダンサーとの共演のようだ。その視覚的効果に目を奪われたのは、能美健志監督の演出もあったと思うが、内山陽瀬さんがクラシックバレエ出身でダンスの動きに優雅な上にスピード感があったからであり、芸術は技術でもあることを再認識した。そして作品のテーマである音との融合では、緊張感のあるチャイコフスキーの協奏曲が効果的であり、作者の意図は充分に伝わった。今回、この受賞作はある意味ではスタンダードであり、それ以外のより実験的な選択肢もあり得た。それらも素晴らしく魅力的であったのだが、今回は皮肉にも該当者が多すぎて最終的に一つに絞ることができず、美術館という空間を活かし音楽とダンスの融合を、美しさを極める形で表現された内山さんを宇フォーラム美術館賞としました。

内山 陽瀬
・林 衣織 林 茶織
「対~ふたりぼっちの風吹くころ~」
説明にタイマンとあるが、作品を観てダンサー達が詩の朗読とのコラボレーションに挑戦した意気込みが伝わってきた。特に二回目の公演では会場の特性をつかんだ桑原滝弥氏の美声がオペラのように会場に響く中で、息の合った切れの良いダンスを披露した。詩の朗読はその人の声の大きさや質に関わり意外に難しいが、この詩とダンスという独自の試みは相乗効果を発揮し、成功した。

林 衣織 林 茶織
・鴻巣 明史 「Recollection」
題名は「回想」で家族の出来事のようだ。人生に起こる様々な出来事がショートストーリーのように上手くダンスで表現されたが、二人のダンスの技術はバレエ団だけに秀逸。また子供が花を観客に渡すというパフォーマンスも印象的だった。

鴻巣 明史
・ふりだしにもどる(寺崎 ゆいこ、宮本 悠加)
「そっちの星」
振出しに戻る(寺﨑 ゆいこ・宮本 悠加)
谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」なる詩を表現したもの。会場の二室をそれぞれの星に見立て、混じり合わないそれぞれの暮らしと孤独を表現。演出を理解するためには詩の理解が必要で、難しい題材を選ばれたように思えるがユーモラスな音と音楽、小道具の使い方でダンスの表現が活きていた。二つの部屋の出来事を観客は同時に見ることはできないという設定だが、観客が自由に動き回るという前提。しかし観客が多くてそれが十分できなかったのが想定とやや異なったかもしれない。

ふりだしにもどる(寺崎 ゆいこ、宮本 悠加)
・冨川 亜希子 「Is it right? Is it wrong?」
何が正しいのか、正義とは何かを問う。SNSという新たな手段でおきる誹謗中傷という現代のテーマを取り上げ、不平不満を拡散する人、細かいことを気にしすぎる人、我を貫こうとする人。そして様々な人格が交差する社会をドラマのように作品化したことを高く評価したい。ダイナミックな振り付けもダンスも、完成度は高い。そして多人数の出演者ゆえにドラマを見たような満足感があった。

冨川 亜希子
・山内 梨恵子 「波の襞」
ダンスと音楽のコラボレーションだが、最初は会場が青い光で満たされて海の中にいるような演出に目を見張る。ダンスも良かったが、さらに音楽が生ピアノであり、この演奏が音楽の演奏会レベルの見事なもので素晴らしく聞きほれた。しかし床に置かれたランタンにより、ダンスの横の動きが制限されたように感じた。さらに、観客の部屋も青の光になっていれば、と思った。

山内 梨恵子
・Alc.6%vol(吉田 栄子・杉本 咲野)
「ちっこい脳みその幸せのため息はため息もちっこい」
大なり小なり脳みそほど宇宙的なものはない、という斬新なテーマ。次に何が起きるのかと、観衆は固唾をのんで見守る。二人の衣装はとびぬけてユニークで、ウエディングドレス風のものと、ライトがつけられた衣装が暗闇で点滅しながら光るもの。狂気を感じるほどの緊張感に満ちた衝撃作である。ただ、題名とダンスの関連が最後までわからなかった。

Alc.6%vol(吉田 栄子・杉本 咲野)
・吉田 拓 「重力活動報告」
手前の部屋の中央にオレンジ色のシャツとジーパンを着た普通の若者がうつぶせに横になっている周りを、観客が取り囲んでいる形からスタート。彼はそのまま大阪弁で独り言を言い始める。さらに次々に不思議な独り言をいいながら、息も切らずに踊る身体能力の高さはすごい。さらに会場の階段を使うというパフォーマンスに観客は釘差付けになり、応援していた。これは驚きに満ちた伝説的パフォーマンスだ。彼はこの後どのような活動をするのだろうか期待したい。

吉田 拓
・加藤 理愛 「さよなら」
テーマは人生における離別と遭遇。少女たちの始まったばかりの人生において小さなコミュニケーションを象徴的なシーンで作ろうとしている。一見どこにでもいる普通の少女達に見えるが、ダンスが始まると、表情も変わり切れのあるダンスをテンポ良く展開する。ダンスの質は高い。ドラマ仕立てのダンスであり、見る人にいろいろな受け取り方をさせる作品に仕上がっていた。

加藤 理愛