Creative space 2023

10月7日、10月8日 Creative space 2023  
・現代舞踊新進芸術家育成Project2 現代舞踊協会提携ダンスパフォーマンス
・令和5年度次世代の文化を創造する新進芸術家育成事業(文化庁)
10月7日、石井里奈、伊東由里、長田萌夏、田中早紀
10月8日、佐々木紀子、佐藤美桜、澁谷智志、風花
(一社)現代舞踊協会主催。(写真は現代舞踊協会提供)
若手の舞踊家育成のプロジェクトで今回、上記の文化庁の事業として選ばれ、美術館で繰り広げられる本格的ダンスパフォーマンス。



クリエイティブスペース2023   平松朝彦
今年も多彩な作品が集まった。順番に簡単な印象を書かせていただく。「」内は題。()内は各自のコメント。
1、石井里奈「ROSE-散りゆく際まで誇らしく-」 バッハの音楽が流れて、クラシックなイメージの中、赤いドレスが舞い、赤いバラの花(状のもの)が散る。小さなろうそくを持ち暗い隣室へ移ると床には環状の光が並べられ、小さな台にガラスのケースがある。その扉を開けてろうそくをしまい、輪の中で踊りバラを散らす。オーソドックスだが光や小物を象徴的にうまく使うとともに、二つの部屋を使ってバラの変化と意図を上手に表現している。2、田中早紀「:re quire」(憧れた夢の続き いつになれば楽に 押しては返す波のように その中で、手を握ってよう 明日から、また選んだ道を進めるように) 田中早紀と樋渡祐帆とのデュオ。黒い上着はスーツ風。横からの光。ペーソスのある音楽と効果音。緊張感のあるテンポの速いダンスでお互いに手を取りながら葛藤や困難に立ち向かう様子がうまく表現されていた。3、長田萌夏「塵と網」 ダンサーは白い服で10mくらいありそうな不織布をまとって登場。手に持ったスマホから音、声が聞こえる。白い布は繭のようでもあり、苦し気に布の中であがくようなダンス。隣室に移ると網から抜け出て、自由を謳歌するように仰向けにひっくり返り、足で民族的な太鼓をかかえてたたくというユニークな動きと展開。布は世俗という塵でもあり社会を覆う網でもある。最後に元の部屋でスマホをガラス瓶にいれ蓋をしめると、流れていた音はとぎれる。スマホという機器はもはや現代を象徴するものになったがそれをダンスに取り入れた作品。スマホを消せば本来の生活が戻る、というメッセージを感じた。3 伊東由里、「UNKNOWN-〇〇列車の旅」(君との旅はまるで人生のおさらいをしているみたいだ。) 列車の模型のレールが四角く床に置かれている。まずは子供がそのおもちゃで遊んでいるというシチュエーション。ダンサーが中で表情豊かに躍る。アナウンス、ナレーション、ピアノ、低音の効果音。突然、壁に映像がプロジェクターで大きく投射される。電車の音とともに、真っ黒な闇の中に人の姿がわかるスピードで延々と走る通勤電車。社内の乗客は少なく、その一人一人の様子がわかる。小さな椅子と子供のおもちゃのある隣室に移ると、ダンサーはレールのない床でおもちゃを走らせて遊ぶ。すると突然フルスクリーンで実際の列車内から撮った後方の実写映像が展開。そして楽し気な音楽。これはダンスというより劇仕立ての作品。5、風花(東京舞座)、「Naked」(ありのままのわたしはうつくしい。うつくしく生きよ) 男性一人、女性七人、計八人の群舞は迫力がある。白い衣装で、目の周りには白い化粧。おどろおどろしい音響。光(懐中電灯風)をもつ人がいろいろなところをなにかを探るように照らす。ダンサー同志は絡み合い、エロスの要素も感じる。二つの部屋に散らばっての群舞。会場一面に写真をまく。最後にダンサーたちは床の写真を見て回る。それらの写真には、自分たちの踊りの光景が写っている。6、佐藤美桜、「cord」(背反する要素が混ざり合う)  コードとは紐の意味がある。機械的でシャープな動きのソロダンス。独特な音の音楽とシンプルな衣装。電子音的なキレの良いダンスは背反する要素が混ざり合う状況をうまく表現している。コードを表すのか黒の直線のラインをあしらったデザインの上着。長ズボンの衣装のせいか少し体操競技を思わせる機械的な動き。小道具はなくダンスそのもので勝負。7、澁谷智志「うつろにうずく」 地味なグレーと黒の衣装だが、鍛えられた筋肉と驚くほどの柔軟性を持った舞踏派といえる動き。まずは、しずくの落ちる音が会場に大きく響く。それにオリジナルのピアノの打撃音が加わる。手を上に伸ばした求心的、宗教的、瞑想的な静かな動きが印象的な作品。8、佐々木紀子「はざま」手前の部屋を舞台に見立てて、観客は奥の暗い部屋の奥に並ぶ。ダンサーがチェロでラフマニノフなどを演奏する。次第に演奏される音とは別の録音との二重奏がはじまる。終わると、チェロを背中に抱えてゆっくりと歩く。そして暗い観客の部屋に進む。横から照明が当たる中、壁に手をついたりする即興的な空間とのやりとりがある。音と空間と光をうまく使った作品。補足だがチェロの響きは豊かで耳を奪われた。
今回の宇フォーラム美術館賞は、伊東由里「UNKNOWN-〇〇列車の旅」としました。この作品は、電車という日常の乗り物を通じて、当たり前に営まれている日常生活の愛おしさから、生きることの意味を唱えている。電車は子供にとってどこでも行ける自由の象徴。小道具や映像のアイデアも秀逸。ダンスもレベルが高いが、それを忘れさせて一つのドラマなのか、と思わせる展開の力作。二つの部屋にそれぞれのプロジェクターで大画面の映像を投射したが特に後半はまるで自分が電車に乗っているようで、没入型アート。ダンス、演技、音響、音楽、光、映像、小物を含めた舞台美術を高度に実現するには、多くの有能な協力者スタッフが必要だがそれらにも恵まれた。
一方、選外のすべての作品にも、私なりにメッセージを感じ、すべてが「作品」足りえていてそれぞれ感心させられた。本来、ダンスの場ではない美術館の空間を生かしての舞台と観客席の区分けのない一体感のある体験型パフォーマンス。この美術館が、踊るのが楽しいという人の自由な表現の場となればこんなにうれしいことはない。皆さんにご参加いただき感謝するとともに、またお会いできればと思っている。
最後に光の演出に苦労された舞台監督の能美健志氏、踊りの場所の移動にも対応した音響の河田康雄氏、会場のお客様の誘導などの工夫をされた現代舞踊協会のメンバー、この企画にご協力いただいた現代舞踊協会、その他の支援者の皆様に感謝したい。




伊東由里

長田萌夏

石井里奈

田中早紀、樋渡祐帆

風花

佐藤美桜

澁谷智志

佐々木紀子